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ここはTW2シルバーレインのキャラクター、芦夜恋月のブログです。
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其は花の様に、Bパートです。
……うーん。微妙だなーと思いつつ。

まだ校正してないので、それは明日と言うことで。
今日はもう、寝るのです。


 芦夜宗家を覆う闇は深い。
 それは、どこか、夜気を孕んだ冷たさに包まれたようにも思えて。
 時折、そんな瞳をしていたな、と思い出した。芦夜の家を誇らしげに語るとき、彼らの友人であり、現在囚われの姫である存在の瞳は果てしないほど漆黒に感じた。
 今、目の前にいる男もまた、そんな目の色をしていた。


 少しだけ、時間を戻す。
 芦夜宗家から出てきた一団を確認した狩谷・真司(謎のシルクハットぱぴよん・b05491)は、取り急ぎ、先程まで待機していた樹木から飛び降りた。同じく陽動班として待機している黒部・貴也(銘無き闇の刃・b08272)、冴島・遼二(高校生ファイアフォックス・b01359)と合流するためだった。
 遠目でちゃんと確認は出来なかったが、ほとんどの人間が宝剣やら連珠やら――要するに符術士の武器を持っていることは確認出来た。
 目的はおそらく自分たちを狩ること。
 真剣を持っていることは、其れを意味していた。

 だけど。
 と思う。
 自分は彼らの構成を知ることが出来た。対して、彼らは自分たちの事を知らない。人数も、構成も。
 だから、それはとても大きなアドバンテージだ。

 そう。
 そのはずだった。
 この時点では、その考えは間違いなかった。
 まだ。

 合流した二人と作戦会議を行い、結果、まずはイグニッションをしないで――能力者であることを封じ芦夜の人達と接触。その際、遼二が木々の上で待機し、いざというときの遊撃要員となる。そう話が決まった。
 

 そして。今に至る。


「お前達が月影楼か?」
 その集団の中心にいた長身痩躯の男は口元に微笑を浮かべ、対照的にむすっとした面持ちの貴也に声を掛けてくる。
 距離はおよそ2m程度。……抜刀すれば切っ先が届く程度の距離なのは、男もすでに戦闘する気で満ちているためなのだろうか。
「……人に名前を聞くときは自分から名乗るのが筋じゃねーの?」
 貴也は負けじと見上げながら言う。細い目の為、そうは見えないが、その目はいわゆる"ガン付け"と言う奴であった。
 男の微笑が気に入らない。そう言う理由もあった。
 それは友好的な徴ではなく、悪戯する子供に対して
(あー、仕方ねーな)
 と微苦笑する、そんな皮肉な微笑みに見えたのだ。

「あー、仕方ねーな」
 まるで、貴也の思考を読んだかのような同じ台詞が男の口からこぼれた。

「俺の名前は芦夜・博紀ってんだ。お前達の友人の恋月の従兄で……まぁ、いわゆる婚約者って奴だ。明日になればあいつと婚儀を結ぶことになってる。で、その前にそれを邪魔しようとする狐を狩ろうとしているわけだ」
 言いよどむことなく、一気に。
「ま、悪く思うな」
 腰に差していた日本刀の鯉口をさっと切る。
「俺たちは無理に争いたいわけではありませんから、そんなに血走らないでください」
 それを制そうとしたのは真司だった。オーバーに両肩を竦め、こちらも苦笑じみた笑みを浮かべる。挑発行為とも取れかねないそれに男はもう一度、口の中で「仕方ねーな」と呟く。
 しかし、その鯉口は切られたままだった。
「一応聞いてみるけど降伏は認めてもらえるのか?」
「一応答えておくが、その気があればな」
 貴也の言葉に、それに添ったままの答えを男が返す。
「武装解除と拘束、か?」
「話は早いほうがいいな。その通りだ」
 だが、男は左手の日本刀を放そうともせず、距離もそのまま。
 端から貴也達の言葉を信じていないと主張していた。
「そいつは断る」
「だろーな。まぁ、そのほうが遠慮無くやれるってもんだ」
 そして、男の右手が日本刀の柄を握ったその瞬間。
「ふう、どうしても戦うというのですか……学生相手にそんな大人数で……芦夜といっても、ただの臆病者の集団なだけなんですね、わかりました。お相手します……」
 真司の呟きと。
「丸腰の未成年二人によくもまぁこれだけの人数と武装を揃えたもんだ。大人気無ぇ」
 貴也の皮肉と同時に。

 全ての時が動き出した。

 男の日本刀が抜かれ、投げ捨てられた鞘がからりと乾いた音を立るのと。
 その一団が懐から何かを取り出すのと。
 同時に。
 貴也と真司がカードを掲げた。

「イグニッション!!」

「へぇ。それがイグニッションって奴か。初めて見た」
 半身を引き日本刀を突き出す独特の構えを取り、男が唇をゆがめる。その目はこれからの戦闘に高揚してか爛々と輝いていた。
「真司!」
「狩夜神仙流シルクハット・ぱぴよん…参る」
 裂帛の気合いと共に、狩谷真司から男を中心とした一団に風が吹き付けられる。青龍拳士のみに許された、その気迫を叩きつける能力《王者の風》であった。
 能力者ではない、一般人ならばその気迫に押され、虚脱状態になることは免れない。
 その能力が芦夜宗家の一団を襲ったのである。
 だが。
「ちっ。さすがに能力者が混じっているか」
 貴也が舌打ちをする。その中で膝を崩したのは10人にも満たない人間だった。長物を武器としていた者はそれを杖代わりに縋り付き、そうでない者は地面に倒れんばかりの疲労を顔に浮かべている。
 仲間に縋り付き、その行為を妨げないのは訓練の賜物か。
 一瞬だけ感心し、自分も能力を発動させる。
《闇纏い》
 魔剣士に許された、闇と同化し、一般人の視覚から自分を視認させない能力。
「獅子は兎を倒すのにも全力を注ぐって言うがあれか、雄よろしく雌が獲物を狩って来るまで寝てるだけのヒモ状態か。さすが芦夜。やる事が違うな」
「ああ、そうだな」
 挑発紛いの――いや、挑発の言葉に返ってきたのは、意外と冷静な言葉だった。
 そして。


 狩谷真司の身体が、どうっと地面に倒れた。


「真司っ!」
「おっと、お前の相手はこっちだ」
 倒れた仲間を助けようと近づく貴也の漆黒の刃を、振り下ろされた男の白刃が押さえつける。
 一撃は本気だった。気を抜けば自分の首が舞っていてもおかしくなかった。
「てめぇら、真司に何をしやがった!」
「きゃんきゃん吼えるなよ、兎ちゃん。兎は鳴かないもんだぜ」
 鍔迫り合いの体勢のまま、男が笑う。
「芦夜がどう言う家系か、お前達は判ってて喧嘩を売ったんじゃないのか? それとも恋月はそんなこともお前達に伝えてなかったのか?」
「……陰陽師……」
 一瞬だけ向けた視線の先の真司は、大量の札に囲まれていた。
《導眠符》
 符術士が操る眠りを誘う術である。
「……お前達は強いよ。多分な。一対一じゃウチの奴らは敵わないだろう。だから、一点集中させて貰った」
 未熟な能力者が使えば確かに効果は薄く、眠りに陥る確率はさほど無い。そして、お世辞でも芦夜の符術士と貴也・真司の二人は同等と言えなかった。ただ、修行してきただけの術師と、ゴーストと戦い続けてきた能力者ではくぐり抜けてきた修羅場の数が違う。
 だが、そんな未熟な術師であったとしても。
 一つ一つの確率が小さくても。
 それが一重二重……十以上と重なれば。
「終わりだっ!」
 拮抗が崩れた。
 男が刀を引き、突如のその行為に、貴也の体勢が崩れる。

 血しぶきは舞わなかった。

 ただ、男と貴也の間を割るように飛来した炎の弾丸が、地面を抉り、焦がしただけで。

「伏兵か」
 男が笑う。
 とんっと地面に降り立った少年――遼二は倒れた真司を庇うように手にしたガトリングガンを男に、そしてその背後の集団に向ける。
 ぷすぷすと煙を立ち上らせる銃身は、先程の炎の弾丸が彼から放たれたことを示す証だった。
「……まさか、本当に狐狩りになるとは思っていなかったな。ファイヤフォックスって言うんだろ?」
「ああ、芦夜さんがそーだからな」
 律儀に答え、背後の真司をちらりと見る。
 遼二自身も符術士だから、《導眠符》がどれだけ厄介な代物か理解しているつもりだ。
 一度その魔力に囚われた人間が目覚める可能性は、その魔力に囚われる可能性よりも少ない。これが怪我であれば自分の《治癒符》で癒せたものの。
 無駄と諦めず起こそうと試みるべきか、それとも、まずは男達を排除するか。
 一瞬のにらみ合いの後、詠唱ガトリングガンを構える。
「思いっきりのいい奴は好きだぜ」
「黙れっ!」
 ガトリングの銃身がうなりを上げる。
 それが男の身体を捉え上体を覆う衣服ごと、男の身体をずたずたに引き裂き――。
「貴也!」
「おう!」
 漆黒の刃が男の首を狙い振り下ろされ。


 金属音が響き渡った。


 貴也の渾身の一撃を受け止めたのは、男が懐から抜いた小型の拳銃。驚愕の中、それが詠唱銃であることに気付き。
 そして、男の身体を抉った弾丸は、背後の術者から放たれた札が、一瞬のうちに癒していた。

「バレットレイン」

 銃口を二人に向け、男が囁くように言う。
 それは、どこか朗々と響いた。
 男が、術を詠唱したように。

 そして。

 鉛色の雨が、二人を覆っていた。


     *    *    *


「さすがに、これだけじゃ殺し切れねぇな」
 薄れそうな貴也の視界の中、男――芦夜博紀が笑う。
 本来、バレットレインは無数の弾丸を降らせる、いわゆる集団を攻撃するための能力だ。故に箇々の殺傷能力は低い。それで能力者を倒すことは不可能だった。
 だが、それでも、月影楼の二人をひるませることは可能。
 その瞬間に殺到した呪符は、身体の自由を奪うのに充分な量だった。
 そして、男がゆらりと近寄ってくる様は、幽鬼を彷彿させた。
 とどめを刺しに来る。
 それは判った。
 だが、身体はもう言うことを聞いてくれない。
 安らかに眠っている真司が少しだけ、恨めしかった。
「お前達の間違いは三つあった。一つ、自分たちの力を過信したことだ」
 ああ、と頷く。
 恋月のメールと真司の報告から、芦夜の兵隊に能力者が混じっていることと、それが自分たちより弱いことは判っていた。確かに恋月は宗家の一員には気をつけろと言っていたが、残りは烏合の衆だと高を括っていた。
「で、組織だった数の暴力ってのを見くびっていた点もある。……ま、聡いお前達のことだ。俺達がこれだけの人数だってのは既に知っていたんだろ? まぁ、能力全てに気付いてなかったかもしれないけどな。お前達がまずするべき事は、その数の差を埋めることだった」
 きらりと刃が光る。
 それが振り下ろされれば、自分が死ぬことは判った。
「最後に。……確かにお前達は強かった。だが、上には上がいることを忘れていたことだ」
「貴也ーーーー」
 遼二の声が、何処か遠くに聞こえ。
 そして、刃が振り下ろされた。

 喉を襲った衝撃は、死ぬほど痛かった。
(……って、俺、死ぬんだよな)
 恋人の寂しげな笑顔と泣き顔が、まるで走馬燈のようによぎった。


     *    *    *


「宗主代行」
 声がした。
「さて、お前はどうする?」
 体中が悲鳴を上げている。それでも気丈に顔を上げ、遼二は宗主代行と呼ばれた男――今、貴也に日本刀を振り下ろした男を睨み上げていた。
「……どうして、だ?」
 男の刃には血の曇りは無く。
 その足下に転がる貴也の首はまだ繋がっており、これまた先程と同じく飛ばされた呪符がその喉に張り付き、打撲を癒し始めている。
「どうして僕たちを殺さない?」
「……死にたいのか? はっ。よせや。なんで可愛い従妹の友人を殺さないと行けないんだ。……ま、殺す気だったんだけどな」
 平然と吐かれた言葉は矛盾していた。
「……そりゃ、俺達が芦夜さんを奪いに来た」
「ああ、お前達は良くやったよ」
 笑う。
 先程までの皮肉げな笑みのママ、だが、どこかあどけない笑みで。
「イグニッションってのも、銀誓館の能力者がどんなものかも見せて貰った。……芦夜にとってはそれが勝利だ」
 遼二の顔に疑問符が浮かぶ。
「……まさか」
「ご名答。流石聡明だな。……そう、芦夜は芦夜恋月に婚儀を結ばせる気はなかった。真意はお前達を観察したかった。それだけだ」
「……僕らを、からかったのか?」
 男は日本刀を拾った鞘に治め、首を振る。
「そう言うな。俺達だって真剣なんだ。こういう機会は滅多にないからな」
 そして急に真顔になった。
 それは酷く真摯なもので。
 その瞳に見つめられ、遼二は口をつぐんだ。
「ま、お前達もさんざん暴言を吐いてくれたんだ。お互い様ってことにしとけ。あと、目を覚ましたらこいつらに伝えておいてくれないか?」
「…………」
 沈黙。
 男は構わず続ける。
「また遊びに来いよ、兎ちゃん」
「……伝えておきます」
 いつもの口調に戻った遼二は、憮然と頷いた。

 

     *    *    *


 術師連中に命じ、丁寧にも捕縛して彼らの乗ってきたバスに転がす。
 唯一意識のあった遼二は、その光景を――同じく捕縛されてはいたが――見つめていた。
「なぁ、お前は俺達を卑怯だと思うか?」
 宗主代行と呼ばれていた何故かそんなことを口にする。
「……ええ」
 だから、そう応えてしまったのかも知れない。
「そうか。まぁ、そうだよな。……でもな、何か守るもんがあるってことは……卑怯って言われても出来る手段を全部使うってことだ。俺はこうしなければお前達に勝てなかっただろうし、……まぁ、正直、お前達がちゃんと戦っていれば人数差があっても負けていたと思う」
「今更、謙遜ですか?」
「誉めてるんだ。これでも」
 はっと笑ったのは何処か虚無感が漂っていて。
「……貴方は」
 気が付いたらそう聞いていた。
「何を守ろうとしたんですか?」
「芦夜」
 男は闇のような黒色を湛えた目で、遼二を見つめ言う。
「過去とかそう言うのは関係なく、自身の家の尊厳だ。どんな人間で、どんな家庭でも自分の家が汚されるのも侮辱されるのも好む奴なんてそうそういない。……それに、お前達がどういう風に考えていても、俺は芦夜宗家の人間が好きなんでな」
「……いいわけ、ですね」
「ああ、いいわけだ」
 そして、男は背を向けた。術師達を従え、再び芦夜の家に向かっていく。
「……早くみんな、帰ってこないかなぁ」
 椅子に縛られた体勢のまま、遼二は呟いた。
 気持ちよく眠っている真司も、苦悶の表情を浮かべながら眠っている貴也も、眠っていて羨ましいと少しだけ、思いながら。

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プロフィール
HN:
芦夜 恋月
年齢:
34
性別:
女性
誕生日:
1990/01/24
職業:
高校生ファイアフォックス
趣味:
芦夜であること
自己紹介:
 全てのイラストは下記要項がつきます。

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